キム・ナンド「つらいから青春だ」韓国・ソウル大学で学生に「最高の先生」と絶賛される人気教授による若者たちへのエールとアドバイス。辛いときにおすすめの本 掲示板
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- 日時: 2012/03/30 00:00
- 名前: つらいから青春だ
- 「つらいから青春だ」 きみへの手紙 ― スランプ(「本文」より)
そうか、きみ、近ごろスランプなのか。怠惰の沼からなかなか抜けだせない? そんな日々が一日二日と続いて、いまでは自分を憎く思うほど、それほどひどいスランプにはまっているって? それでぼくの話を聞きたいって? 先にひとついっておこう。ぼくはスランプという言葉は使わない。かわりにただ「だらけている」という。スランプ、と表現するとなんだか自分をごまかしているみたいだから……。ここからはただ「だらけている」とか「怠惰」を使わせてもらうおう。
ぼくがずっとそうだった。一度も官僚的なお堅い組織で働いたことがなく、兵役も軍隊ではなく学校(陸軍第三士官学校)だった。そうして約二十五年、学生としてすごして、ある日、立場が先生にかわっただけだ。 人は機械じゃないからね。感情的に動揺したり、肉体的な疲労があったり、あるいはそんなのとぜんぜん関係なく、ただなんとなくだらだらしていたいときもあるし、それに、そういう気持ちは長びくのが人情のつねだろう? なんでわかるかって? ぼくがしょっちゅうそうだから。きみたちにはいわないだけだ。 ぼくは怠惰というのは慣性の問題だと思っている。自転車は、乗って最初にペダルをこぎだすまでがいちばんたいへんだ。パソコンをたちあげるのも、車のエンジンをかけるのも、生きるのも、同じことだ。停止している状態から抜けだして、モメンタム(はずみ)を与える意志が、留まろうとする慣性に押されてしまう現象。それがきみのいう「スランプ」にふさわしい定義だと思う。
問題になってくるのは、だらしのない自分がイヤになったといいながらも、そのだらけた日常に慣れてしまって、それを楽しんでいるということなんだ。スランプから抜けだしたいといいながら、じつはそれを楽しんでいるんだよ。きみが実際のところ、スランプを、ひさしぶりに続いた怠惰を楽しんでいるとしたら、ひとまず読むのはここまでにしてほしい。ここまでしか読まない人のために、はげましの言葉をひとこといってあげよう。 「スランプとは、さらに生産的な明日のための充電期間だ」。これでいいだろう? じゃあ、また。
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さて、じつは、この言葉はウソだ。あまりにも長くだらけてはダメなんだ。自分が腐ってしまう。そうなったら、きみの美しい肉体と魂が悲しむし、それはものすごくもったいないことだ。だから、スランプ、いや、怠惰から「本気で」抜けだす覚悟をまず決めるんだ。
ふつうスランプの状態でいると、ハッと我にかえらせてくれる「外からの刺激」が、自分を立ち直らせてくれるのを待つことになる。強烈な出来事や、友だちや先輩の手厳しいひとこと、あるいは焼酎をあびるほど飲んだあと、うす暗い明けがたの酔いのなかで感じる気づき……。そんな刺激が訪れるまでは、自分のだらしなさに自虐的でいようとし続けるだろう。 ひとつだけいおうか? そんな刺激はないんだ。いや、ひょっとしたら、いつでもある。 ほんとうに重要なのは、けっきょく、自分自身だということだ。その刺激を刺激としてうけとめて、抜けだす努力をしなければ、そんな刺激が何百回とあったってなんの役にも立たない。本気で怠惰から抜けだす気があれば、鼻の先をかすめる風にも生きる意欲をみつけだすし、その気がなければ、そばに雷が落ちてもずっと同じ状態なんだ。
ぼくもきみたちくらいのときは、秋になると、とくに十一月になると、すっかり感傷的になったり、憂鬱になったりしたものだ。「さあ、十一月だ、感傷的になるときだ!」って自己暗示をかけもした……。そうしておいて、その感情を解消するために酒を飲み、音楽を聴き……そうするとますます感傷的になって……。いま考えてみると、それをどこかで楽しんでいたんだ。かさぶたになったばかりの傷口をつつくとヒリヒリするけどおもしろいだろう? 若い日をもてあますというのは、そんなかさぶたみたいなものだったんだ。 ぼくもおとなになったんだろうか。次第に解決策をみつけてゆき、感情は体の癖だというのに気づいたんだ。太陽にあまりにあたらなかったり、運動不足だったり、酒やタバコが多すぎたり……。ぼくは本気で感情から自由になりたいときは、五キロほど走るんだ。酒はむしろなるべく少なめにする、体じゃなくて心のために。そしてなにより仕事をする。かなり効果がある。
それに体の癖よりもっと根っこにあるのが「目標」の問題だ。目標がぼんやりしてくると、怠惰はたびたびやってくる。ぼくのような年齢では、新しい目標なんていうのはそうそうない。ぼくの目標は「いい先生」、そして「いい研究者」になることだけれど、その「いい」というのは、とてもばくぜんとしている。目標は大きいほどいいけれど、あまりに遠いとモチベーションになりにくい。だから、ぼくは、「いい先生」「いい研究者」以外にも、もう少し小さくて具体的な目標を立てる。だいたい一週間とか一カ月単位の目標を。
スランプから抜けだしたいかい? 「本気で」思うなら、解決は思っているよりかんたんだ。短く時間をとるのがポイントだ。そう、「今日」解決すればいいんだ。 つねに「今日」がたいせつだ。今日やることは明日に延ばすな、なんて、そんな次元の話じゃない。ただ今日、自転車のペダルの最初のひとこぎを踏んで、それで満足すればいいんだ。そんな今日という日々が、おそろしく速いスピードになっていく。怠惰が慣性であるように、勤勉さも慣性になるからだ。
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元気をだせ。話が長くなったね。ぼくはいつもそうなんだ。かわりに長い説教を要約してあげよう。(先生らしいだろ?) 一、怠惰を楽しむな。もしほんとは楽しんでいるなら、つらいなどというな。 二、体を動かせ。運動して、人に会って、やることをやれ。酒を飲まずに、早く寝ろ。 三、それがなんであろうと、今日やれ。いまやらないのなら、それはきみがまだ怠惰を楽しんでいるという証拠。駄々をこねるな。 四、(最後だ、よく聞け!)どんなにひどい悲しみやスランプにあっても、きみはあいかわらずきみだ。ちょっとしわくちゃだからといって一万ウォン札が千ウォン札になるか? 自分をいじめるな、どんなときでも、ぜっ・たい・に。
知ってるかい? すべてのものごとは流れていくんだ。すぎてしまえば、今回のこともなんとも感じなくなる。でも、それでも、きみの今回のスランプが少しは短くなるように祈っている。 おやすみ。(いや、まだ寝るな。今日やることがあっただろ?)
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著者:キム・ナンド(韓国・ソウル大学教授)
<内容> 韓国・ソウル大学で学生に「最高の先生」と絶賛される人気教授による記録的ベストセラー。韓国出版史上最速でミリオンセラーを達成し、累計170万部(2012年2月現在)を突破している。
大学で教鞭をとりながら多くの学生の悩みに接してきた著者が、誰しも経験する青春特有の苦しみを少しでも和らげ励まそうと書いた若者たちへのエール。青春時代とは悩んであたりまえの時期、もっと悩んでいいのだと、自らも通過してきた道を振り返りながら、その季節の意味と今やるべきことを教えてくれる。教育者として、人生の先輩として、親として、20代の若者たちや我が子に向けて書いたという、厳しさと愛情が詰まったアドバイスが並んでいる。
<目次> プロローグ 忘れるな、きみはまぶしいほど美しい 日本の若い読者のみなさんへ
PART1 答えはきみの瞳のなかにしかない 人生時計:きみの人生はいま何時だろう? きみの熱い思いにしたがえ きみという花が咲く季節 答えはきみの瞳のなかにしかない ときには偶然に頼ることもあった あせって人生を安定にゆだねるな まだ財テクをはじめるな 歩みを止めてふりかえる うらやましく思わないなら、それは負けだ きみへの手紙─スランプ
PART2 思っているほど底は深くない 試練は自分の力となる 思っているほど底は深くない そのひとりがきみの大きな海だ 愛なんていらない2・0 人生の誤答ノート だれでもいまがいちばん人生で歳をとっている 死ぬほどつらいきみの今日をうらやんでいる人もいる 自分への手紙─強く夢みる きみへの手紙─わかれ、そのあと
PART3 奇跡は少しずつ叶えられるものだ 三日坊主はあたりまえ、生きかたは決心でなく練習だ ひとりで遊ぶな 文章の力は大きい 隣の知識を幅広くとりこめ 忙しすぎて時間がないといういいわけについて きみの生活のライム(rhyme)はなにか? 奇跡はゆっくりと叶えられるものだ きみへの手紙─浪人生活をはじめたきみへ
PART4 「明日」が導くきみの人生 きみがくだした決定で人生をリードしろ 「明日」が導く人生、「自分の仕事」が導く人生 使えない「アルファ」たち 大学はゴールか、スタートラインか? きみだけのストーリーをつくっていけ 二十代、お金よりだいじなこと ぼくたちにとって大学とはなにか? とにかく汽車に乗ってみろ キャンパスを去るきみへ きみへの手紙─人生のピークを考える
エピローグ 愛する息子よ
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