ジャーナリスト・上杉隆さんと謎の社会派ブロガー・ちきりんさんによる、異色対談 ( No.1 ) |
- 日時: 2012/02/03 14:00
- 名前: 対談
- なぜ、ちきりんさんは、正体を明かさないのですか?
ジャーナリスト・上杉隆さんと謎の社会派ブロガー・ちきりんさんによる、異色対談 ttp://bizmakoto.jp/makoto/articles/0907/23/news018.html
上杉 ちきりんさんは覆面でブログを始められていますが、きっかけを教えてください。
ちきりん 私は普通に大学を卒業し、大手の金融機関で働いていました。しかしそこを退職し、外資系の投資銀行で働こうと思ったのですが、その会社は日本の大学を卒業した人を相手にしていなかった。米国の大学を卒業していないと、「最終学歴を満たしていないわよ」といった雰囲気。
「じゃあ私も海外に留学しよう」ということで、27歳から2年間、海外で過ごすことに。そして日本に戻って来て「また金融機関で働くか……」と考えたのですが、当時はバブル経済がはじけたばかり。これから“落ちていく”業界を選ぶよりも「違ったところのほうがいいかな」と思い、今は畑違いの外資系で働いています。
上杉 で、仕事をしながらブログを続けていらっしゃる?
ちきりん もともと「書く」ことはとても大好きなんです。中学生のころ、自分が考えたことなどを書いて、クラスメートに読んでもらったりして。それは交換日記といったものではなく、私だけが書いて、それを読みたい人が読むというもの。そして人から「面白い」と言われると、調子にのって書いていました(笑)。だからといって、メディアの世界で働こうとは思わなかったですけど……。
ブログを実名で書いていらっしゃる方は多いですが、まだまだ自分が所属している組織(会社)とその人の意見を一緒にされてしまうことが多い。ブログの内容をめぐって誤解されることも多く、実名を出すのが「面倒くさいな」と感じたんです。ただ先ほど申しあげた通り、書くことは好き。しかも読んでもらうことは、もっと好き。もし私が匿名で書いたらどのくらいの人に読まれるのか? そういった好奇心からブログを始めたのです。
実名を出さずに、私のブログを読んでくれる人。その人たちは、私の文章が面白いから読んでくれているということ。どのくらいの人が読んでくれるのだろうか? このことを試すために、名前を出さずに書くことにしたのです。
しかしブログを始めたころは、ほとんどの人が読んでくれませんでした(笑)。2005年の3月ころから始めたのですが、最初のころは月3000PVほど。でも2008年ころから読者の数が増えてきて、最近では月40万PVほどになっています。
上杉 偶然ですが、僕もブログを始めたのは2005年の3月です。しかし僕の場合気まぐれだったり、面倒くさくなったりして、毎年3月になると休止したり、タイトルを変えたりして内容を変えています。ちきりんさんはどのくらいのペースで更新されていますか?
ちきりん 週2日は休むことにしているので、月20日ペースでブログを更新していますね。
上杉 僕のブログもピーク時、月に40万PVありました。けどブログのタイトルを変えたりしているので読者が散って、アクセス数は減っています。また最近は、あまり更新していないので、読者数はさらに減っていますね。
ちきりん 面倒になってブログを更新されないのですか?
上杉 いや面倒というより、忙しくて更新することができないのです。かつては毎日、今は週1本ペースで更新することを考えているのですが、それも難しくて……。
そもそもブログを始めたきっかけは、自分の記事を“管理”するため。自分が書いた記事を掲載しておくと、同業他社の人がチェックしてくれるんです。そして「上杉はこんな仕事をしているのか。じゃあ、コメントをもらおう」といった感じで、仕事につながることが多い。
ブログを始める前は、僕の記事に対しいろんな人が反論していました。反論してくれるのはいいのですが、「上杉隆」で検索すると、その人たちの批判的な文章ばかりが上位に並んでいた。そのままにしておくと、「上杉隆」のイメージがすごく悪くなる。なので“反論権”の意味も含め、自分のブログを始めたのです。……ブログを始めても、イメージは悪いままですが(笑)。
上杉 ちきりんさんはブログを書く上で、面倒だと感じたことはないのですか?
ちきりん もちろんありますよ。私は会社員として仕事をしていて、習い事もしています。ブログを書いていて、コメントをもらうとどこまで返事をしていいのか、その判断が難しい。コメントの返事をするのに時間がかかってしまうのが大変ですね。
書くテーマについては“探す”というより、通勤中や入浴中などに「こんなことを書けば面白いかな」といった感じ。いろんなアイデアが浮かんでくるのですが、時間が経ってもそのアイデアを覚えていれば書く。ただ覚えていても文章にするのに1時間ほどかかってしまうので、忙しいときはお休みです。
上杉 ジャーナリストの中にはブログを有料化している人もいます。しかし有料化にすると、ブログを書くことが“義務”になってしまう。脅迫観念ではないけれど、ブログを休んでしまうと「読者が逃げるかもしれない」といった不安ばかりが膨らむかもしれない。
ちきりん そうですね。1週間ほど海外旅行に行く際、私はPCを持っていきません。海外に行っているときに“炎上”している可能性もありますが、私は趣味で書いているので、そのへんは折り合いを付けていますね。
上杉 ブログというより、ネットの登場によってメディアの世界は大きく変化しつつあります。ネットのない時代であれば、既存のメディアで報じられたことが先行し、それがほぼすべての情報として広まっていました。しかし今は新聞の朝刊が出る前に、ネットで情報が流れる時代。しかも一次情報のネットのあとに出てくる新聞記事が、誤報だったりすることも起こる始末です。
ちきりん 上杉さんのところに、読者からの批判メールなどは来るのですか?
上杉 自分のブログにメールアドレスを公開していますが、メールアドレスに来るものは真っ当な批判が多いですね。自分の正体(名前など)を明かして「間違っているのでは?」「私はこう思いますよ」といった建設的な批判が多い。
ただコメント欄には、匿名でヒドイものが多いですね。時間がもったいないので相手にはしませんが、やはり実名で書くということはある一定の歯止めになるのでしょう。
以前、ブログで靖国問題のことを書いたら炎上してしまいました。3日間くらい放置していると、700以上のコメントが付いていたので、IPアドレスをチェックしてみた。すると、コメントしているのはたったの4人。
ちきりん えー、たったの4人!?
上杉 このことを知って「しょせん、炎上というのはこの程度のことなんだな」と思いましたね。よく芸能人のブログが炎上することがありますが、炎上とは幻想で、架空そのものです。
1人で400以上のコメントを付けた人に、ブログ上でIPアドレスをさらし「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」と書いた。すると次の日から、その人からのコメントはゼロ。逃げてしまったようですね。
ちきりん ブログにコメントを残すと、IPアドレスが残ってしまう。自分の身元がバレてしまうことについて、多くの人は分かっているはず。だけど朝日新聞の記者が、2ちゃんねるに差別的な書き込みをしたため、2ちゃんねるがそのIPアドレスからの書き込みを禁止した。会社のPCから2ちゃんねるに書き込むということは、匿名ではないということ。これが分からないという記者は、あまりにもITリテラシーが低いということですね。
上杉 実は、僕のブログにコメントをつける人の多くは同業者なのです。
ちきりん ということは上杉さんの場合は、メディア関係の人が多い?
上杉 ですね。ブログというのは幅広い人に読まれているように感じるかもしれませんが、僕のブログの読者は身近な業界の人が多い。なのでブログの批判といっても、リアルの世界とあまり変わらないですね。
ちきりん ブログでコメントをつけるという行為は、ストレスを発散させたいからでしょうかね? 1人で何百ものコメントをつけたり……。
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