野球の送球イップス克服 ( No.1 ) |
- 日時: 2012/01/15 21:54
- 名前: 野球の送球イップス克服 掲示板
- 野球の送球の研究 A study of throwing in baseball
http://www.f.waseda.jp/kanosue/content/yoshi/pdfdata/2007_gra_shimizu_01.pdf
「送球」は味方にボールを投げ渡すことであり、できる だけ捕球しやすいボールを投げることが大切である。しか し野手は如何なる状況あっても、アウトカウントを増やす と共に、走者をできるだけ進塁させないように、急いで送 球しなければならない。それではなぜ、投手のように一定 のフォームではない予測不能な送球の体勢から正確に、尚 且つスピーディーに送球することができるのだろうか。プ ロ野球の野手はどのような捕球体勢であっても、指でボー ルを握り潰すようにリリースしており、ボールリリース後 に拳を握ったような形になっている。つまり、野手の送球 体勢は状況によって様々で送球フォームは異なるが、ボー ルリリースは一定にすることができ、それにより安定した 送球することができるのだと私は考える。 野球選手の多くは「イップス」と呼ばれる現象に悩まさ れている。「イップス」とは、プロゴルファーのトミー・ アーマー選手がうめき病(YIPS)という意味で初めて用い た表現であり、スポーツの集中すべき場面において、プレ ッシャーのため極度に緊張することを表す。野球でいう 「イップス」とは「送球イップス」のことで、極度の緊張 から短い距離の送球がうまくできないことを表す。「送球 恐怖症」ともいわれており、死球や暴投などのトラウマか ら「イップス」に陥るケースが多いとされている。実は私 も「イップス」を経験した一人である。その時「イップス」 人ではボールリリース後の手がじゃんけんのパーのよう な形になるという現象を見つけた。 送球の安定している選手のボールリリース後の手が拳 を握ったような形になるのに対し、「イップス」にかかり 送球が安定しない選手はボールリリース後の手がじゃん けんのパーのような形になる。このことから送球を安定さ せるにはボールリリース時の動きに何か秘密があるので はないかと推測した。 そこで本研究では、送球が安定している選手と「イップ ス」により送球が安定しない選手のボールリリース時の指 の動きを比較して、指の動きの違いを明らかにすることを 目的とした。
<方法> 被験者は大学硬式野球部に所属していた「イップス」の 選手を被験者 A とし「イップス」を克服した選手を被験者 B とした。試合で想定される送球フォームからオーバース ロー、ジャンプ中のサイドスロー、遊撃手から二塁ベース に送球する際のアンダースロー、捕球後できるだけ素早く 送球するクイックスローの 4 種類をハイスピードカメラ で、正面と真横から撮影し、同期させた。カメラスピード は 250frame/sec、シャッタースピードは 10 倍に設定した。 ハイスピードカメラで撮影した映像からボールをしっ かり握った状態からボールが指から離れた状態になるま での 8 コマの静止画を作成した。それぞれの静止画像間は 0.004 秒である。また、ボールが母指から離れてから示指、 中指から完全にボールが離れるまでの時間を求めた。これ をボール接触時間とした。各被験者の正面、真横の静止画 を 4 種類の送球フォームとも比較し、ボールを離す瞬間の 指の動きを比較した。
<結果及び考察> 4 種類の送球パターンで撮影したが、被験者 A はボール リリース時の指の形は母指、示指、中指が伸びきっており、 さらにボールリリース後の手はじゃんけんのパーのよう な形になっていた。また、ボールを長く持つ傾向があり、 指からなかなかボールが離れず、押し出すようなリリース になり、すっぽ抜けてしまうようだ。 被験者 B は、ボールリリース時の指の形はボールを押さ え込むようであり、ボールリリース後の手の形は母指が示 指と中指の内側に入り込むようにして拳を握っているよ うな形になった。 そして、ボール接触時間を比較したところ表 1 のような 結果となった。 表 1 ボール接触時間の比較 このことからボール接触時間を安定させることが安定 した送球につながると考えられる。そして、このボール接 触時間が自分の身体感覚となり、自分で調整することがで きるようになれば安定した送球はもちろん「イップス」も 克服できるのではないだろうか。
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